Amazon prime video『東京女子図鑑』が東京で働くOLに響きすぎる

一週間ほど前にamazon primeに登録した。

正確にいえばまだお試し期間ではあるのだけれど。

 

私はNetflixにも入会しているのだが、prime videoへの乗り換えを考えている。というのも、毎週月曜日の夜の楽しみだったテラスハウスが終わってしまったからだ。

…と思ったが、いま調べてみたら新シリーズの視聴が2019年5月から始まるらしい。もう2ヶ月もないじゃん!という驚きと嬉しさ。やったー。でも結果prime videoの本登録は少し遠のいてしまった。……という私のオンデマンド環境についての報告は置いておいて。prime video限定のめちゃめちゃに面白い作品を見つけてしまった。

 

『東京女子図鑑』

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タイトルの通り、東京の色んな女の子が図鑑のようにたくさん出てくるストーリー。ファッションブランドのバリキャリOLや読者モデル、お花屋さんの店主、ただ街中をすれ違うだけの女の子・・・etc。水川あさみさん演じる主人公が23歳で秋田から上京して40歳になるまでの、彼女を取り巻く環境や人間模様が描かれている。元々は東京カレンダーの連載コラムが始まりだったようだ。

 

上京したら、東京をコンプリートする人生ゲームの始まり。さあ彼女は果たして全てのアイテムをコンプリートすることができるのか。

 

初公開日が2016年12月らしいので、既に丸2年は経っているのだが、1話観終わったところで「何で今まで観なかったんだ。面白すぎる。というより、primeへの登録のきっかけを作ってくれたテラスハウス終了サンキュー!!!」という気分になった。主人公が水川あさみさんなので、とてもフラットな気持ちで観ていられる。個人的な見解ですが、水川あさみさん、女ウケ抜群って感じがするので(勿論男性にもおモテになるとは思いますが)幅広い女性層に受けそうな気がする。共感ポイントがありすぎて感情移入が止まらない〜!

 

田舎出身者の憧れの街 “東京”

水川あさみ演じる主人公の “綾” は秋田出身で、東京に強い憧れを持って上京する。

私も北関東のとある田舎出身なので、東京に対する憧れの気持ちが痛いほどわかる。牛糞の香りの漂うなか、小さい虫にばちばち当たられながら自転車で通学した高校時代。春に校内に張り出される先輩達の進学先を見つめながら、みんなが卒業したら東京に行くんだという強い気持ちを持つ。

 

そして、実際に高校を卒業したほとんどの同級生は地元を出ていった。地方の国立大学に進学する同級生もいれば、その大多数は東京(近郊)の大学に進学するために上京する。一方で、中には受験が不本意に終わり、地元の私大に止む無く進学する友人もいる。わたしは一年無駄足を踏んだが、なんとか地元からは脱却し、夢の東京へ進出した田舎者のひとりだ。

 

現役時代に東京にある滑り止めに受かってはいたものの、もう一年頑張ろうと決めたとき、地元大学に進む友人たちの「なんであんたは東京の大学に受かっているのに浪人までするわけ?」っていう無言の圧力がすごくしんどかった。 

 

地元の大学を卒業してそのまま地元で就職した友人たちの中には、いまでも東京への憧れを捨てきれない友人もいる。仮に夢に敗れたとしても、現職に復帰できるほどのある程度の経験を積みつつ、東京進出を目論んでいる子もいる。

 

 

果たして東京はどれほど意義のある街なのだろうか

でも結局、東京にどれだけの意義があるのか。上京してから私もずっと考えていた。

東京はキラキラした街だ。栄えている街なんぞ、正直日本の中にだって他にもある。仙台や福岡、大阪や京都。有名ブランドの路面店や大きな百貨店だってあるし、お洒落なカフェや美容室だってきっとある。なのに東京だけは別格だ。地方出身者が挙って東京を目指してやってくる。

 

東京には、お洒落な街が密集し、最先端のファッションや食べ物が集まってくる。

それに引き換え、家賃は高いし、物価も高い。どこに行くにも電車賃がかかる。ある意味、東京をコンプリートするのは無人島のサバイバルで生き延びて行くよりも難しいゲームかもしれない。

 

『東京女子図鑑』が面白いポイントは、年齢が上がる毎に住む街も変わっていき、それに応じた人間関係が繰り広げられるところにもある。三軒茶屋、恵比寿、銀座、豊洲代々木上原・・・。東京23区の小さい土地の中に様々なタイプの街がぎゅっと凝縮されている、というのは日本の中でも東京にしかない魅力だと思う。

  

“東京の街”といえば、『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』もめちゃくちゃに最高な作品だ。地方出身者にとって、東京の街といえば吉祥寺下北沢とか超王道の街しか浮かんでこない。だからみんなとりあえず、王道タウンに住もうと一度は思って家賃の高さに絶望する。

 

吉祥寺だけが住みたい街ですか? DVD BOX

 

それが、上京して2〜3年もすると東京には案外色んな街があることに気が付いてくる。秋葉原錦糸町、蔵前や経堂、雑司が谷などなど。 その中には自分にしっくりくる街があるのかもしれない。私は上京してから3回ほど引越しをしたが、一番自分にしっくりきたと思ったのは奥浅草だった。いまでも、高円寺に住んでいる友人と遊ぶと「中央線沿いに一度は住んでみたかったなあ」と、東京の数ある街に対する未練もちょっとはある。

 

みんなは本心ではこんなことを考えている

登場人物が、周りの人間に対して自然に振る舞っているシーン、一人がくるっとこちらに振り返り本心を語ってくれるのがこの作品の見どころのひとつだと思う。 

 

アパレルブランドで働くOLさん達、一見バリバリアパレルで働いていますって雰囲気の子は「私たちみたいなタイプは案外、在庫管理とか総務とか地味なところで働いていて、外見が地味な女がバリバリ働いているんですよ。」と言う。恵比寿のジュエル・ロブションでの誕生日デートのために、見栄を張って29万円のドレスを買う綾が支払い回数をリボ払いでと伝えたあと、何事もなかったようにカードを受け取る店員さんは「リボ払いの利息ってどれだけかかるか知ってます?見栄を貼るためにする出費にしては高すぎると思いますけど?」と鼻で笑う。

 

みんな言っていることはかなり辛辣だ。けれどこれが現実。出身地やお金や若さには価値があり、みんなの内心は思っているよりよっぽど厳しいのだ。

 

東京コンプリートゲームと男たち

東京を舞台にした人生ゲームが進み、それを取り巻く環境が変わっていくと同時に、交際相手も変わっていく。は東京コンプリートゲームの女代表で、男という存在(≒結婚)が切っても切れない関係にある。東京にある様々な街のように、東京には数多くのタイプの男が生息している。

 

 

わたしが思う、綾の一つ目の望ましいゴールは、上京して初めて付き合った阿部力が演じる “直樹” との結婚だったと思う。最終話で再会したとき、内心「よっしゃー!綾さん頑張ったね。このための東京コンリートゲームだったんだね。お疲れさま。」と綾を労う気持ちでいっぱいだったが、現実はそんなに甘くないらしい。まだまだ自分は若いからと胡座をかいて目の前の現実を蹴飛ばして輝かしい未来を掴みに行ってから、後からそれが絶好のチャンスだったことに気が付く。人生はなんと残酷なことだろう。

 

直樹に物足りなさを感じて別れた綾、その後も迷走しながら4人の男を転々として行くが、あまりにもその男性陣のメリットとデメリットの差が大きすぎて辛辣な気分になってくる。「30を過ぎたら、一見魅力的に見える男性にもどんなデメリットがあるか、立ち止まって考えねばならない」という注意喚起をされているみたい。

 

 

一度は腹をくくって結婚という選択肢を取るものの、夫と別居婚状態の最中、同僚の派遣社員の女の子に寝取られて離婚を突きつけられるという残酷な結末に。東京で生きて行くのってこんなにハードなのか。綾さんの人生、あまりにも障害があり過ぎて、どんなハードル走だよと思ってしまう。 

 

 

ほとんどの男性陣が批判的に描かれているなかで、合コンで出会ってゆくゆく綾と付き合った隆之の友人 “涼” は素直な人間でとても好感が持てた。勿論いい人には描かれていないけれど、多くの人が建前で自分を取り繕っているなかで、綺麗事を言わないところが逆に魅力的に見えた。特に、5話あたりの綾とラーメンを食べるシーンで、「たかが千円のためにご馳走様なんて言いたくないだろ」とわざわざ綾の分を奢らなかったところが、完全に嫌味で言っているのはわかるのだけどいい奴だなと思った。

 

男の人に奢って貰って当たり前、むしろ女にお金を少しでも出させるなんて…という描写が中にはあったけれど、その考えは私はちょっと気持ちが悪いと思う。勿論、好感を持っている人にそうして貰ったらありがたいと思うけれど、同僚や友達になんて奢って貰おうという気分には私はなったことはない。

 

最終回で涼とは再会し、結局良い友達で関係は続いていくのだけど、東京を出ていく涼が綾に「おまえにはまだ東京はキラキラして見えてるか?」と問うシーンに、「東京が意義のある街かどうか」の答えが詰まっていると思う。 

 

東京コンプリートゲームのゴール

私も東京でOLとして働いた過去を持つ身として、綾のように東京で強く生きていくバリキャリ女子の人生にはいまだに憧れている。『プラダを着た悪魔』の世界のような、ハイブランドとハイヒールを身に付けたコツコツ族。

 

でも、全てのアイテムを手に入れるには、人生の旬な季節は短すぎるというか、その後の運命を決める瞬間があまりにも数年に凝縮されすぎている気がする。

 

結局は、東京の《ブランド品やお洒落なカフェ、金曜日の夜の恵比寿での待ち合わせやジュエル・ロブションでの記念日デート》のようなキラキラしたものたちは、そのカードを全てコンプリートするには必要なバッググラウンドがあり、それを手にする人はごく限られた人だけだということだ。

 

そして、東京をコンプリートするだけが幸せではないし、幸せの形はひとつではない。

理想の住処は港区の高層マンションではなく、築20年のフルリノベーションの中古マンションかもしれない。

 

 

最後に、ドラマの内容もさることながら、エンディングテーマの『東京完成(トウキョウコンプリート)』が逸品だと思う。歌詞に是非注目して聴いてほしい。

 


東京完成 (東京女子圖鑑 片尾曲)