初めての内視鏡(胃&大腸カメラ)体験記 〜ムーベンと苦い記憶〜

先日、人生で初めての胃カメラ&大腸カメラを体験してきた。

24歳を超えたあたりから、急激に体を壊しやすくなり、年1回のペースで胃腸炎にかかるようになった。少しエアコンの風にあたっただけで盛大に吐く(または)お腹が痛すぎてのたうちまわることが増えた。問診や触診だけでは特に原因は見当たらず、このままではスッキリしないので一回検査をしてみようかという話になった。

 

いざ予約することになり、日時を選ぶも早くて1ヶ月半後という混み様にまず驚く。

麻酔などの検査方法には3種類あったのだが、姉から胃カメラはしんどいという話を聞いていたので、麻酔で寝ている間に口およびお尻から通してもらう方法を大人しく選んだ。こちらが断トツで多いらしい。なお、麻酔に関しては歯医者さんなどでの部分麻酔ですらしたことがないのでこれも人生初である。

 

「お家に帰るまでが遠足です」とはよく言うが、内視鏡検査も似たようなもので、「検査食を食べてから通常のご飯を食べれるまでが内視鏡検査です」というのがもっと流布されるべきだと思う。できればもっと語呂のいい感じで。とにもかくにも、ただカメラを口や尻から突っ込むだけが内視鏡検査ではないのだ。

 

 

 

検査前日(主に検査食レポート)について

検査前日の朝食には、蒸しパンを食べ、白湯を飲んだ。食べ終わってから気付いたことだが、蒸しパンの上にはレーズンが5粒ほどトッピングされており、これは検査前日には控えてほしい食べ物だったようだ。どうやら小さい種のある果物(キウイ、スイカなど)や食物繊維の多いもの(野菜、キノコ、海藻など)は避けるべきらしい。分解しきれず、検査時に種や繊維が残っていると紛らわしいのだろう。

 

 

昼食と夕食は、あらかじめ病院で購入していた検査食(デリシア)を頂く。レトルトパウチが一箱のセットになっているものだ。実費負担は¥1,000。まず、昼食は野菜のクリーム煮とクラッカー。できるだけ見栄え良く盛ったつもりではあるが、なんとも味気ない。チェ・ホンマンであれば1口で平らげてしまうんじゃないかという量だ。問題なのはお味の方だが、クリーム煮は具材もゴロゴロしていて、鮭の入った北海道シチューっぽかった。悪くない。クラッカーは一回り小さく、かつ塩気を和らげたリッツ改めルヴァンプライムという感じだった。

 

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夕食は鶏雑炊と大根のそぼろ煮。左の鶏雑炊は胸肉?ささみ?が入っていたけどパサパサしてあんまり美味しくなかった。泣 ただし右のそぼろ煮は、結構クオリティが高い。大根もかなりとろっとろに煮込まれているし、とろみがちょうど良いのもさることながら、味付けが抜群だった。定食屋の付け合わせで小鉢にちょろっと盛ってあるくらいだったら、レトルトとは気づかないかもしれない。

 

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味気なさpart2

前日は、たったこれしか食事が取れない。人生のプライオリティにおいて、食に一番重きをおいている人間にとっては苦行としかいえない。

 

 

ムーベン(経口腸管洗浄剤)との闘い

ただ、戦いはまだ始まったばかり。翌日にかけて3種類の薬品を飲まなければならない。

まずは1つめの、下剤 ラキソベロン(10ml)はコップ一杯の水かお茶に溶かして飲むということだったが、ほんのり甘い砂糖水のような感じでクセもなく、難なくクリア。この日は検査に備えて12時前に就寝した。

 

 

翌朝、8時までに便が出ているはずだということだったが、夜中はおろか、早朝にも全く動きがない。これまでの努力を無駄にして、再度予約&検査食を追加購入することは避けたいところである。検査時間が遅いので、薬を飲む時間も全て1時間ずつ遅らせてもらっていた。この計算でいえば9時くらいまでは待つ余地があると思い、続いて8時前にガスモチン(腸管蠕動促進剤)を3錠飲む。待っていると予想通り8時半くらいにどっと便意が来た。

 

 

ここまでは順調に来たが、問題はここからだ。ラスボス ムーベンの登場だ。

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(参照:ムーベン配合内用液の基本情報(作用・副作用・飲み合わせ・添付文書)【QLifeお薬検索】

 

前日のうちに下剤の名前を確認していた際、既出の2点に関しては簡単に覚えられる名前ではなかったので容量で認識するしかなかった。こちらはどうか、ムーベン。ムーベン…ムベン……。無便!!!!?!!安直すぎないだろうか。これは製薬会社のせめてものユーモアなのだろうか。ムーベン自体の容量はおよそ500mlだが、これを4倍稀釈して飲まなければならない。しかも、最初の3杯は15分に1杯のペース、4杯目からはなんと10分に1杯のペースで飲んでいかなければならない。1杯ずつ稀釈して飲むのは手間がかかるので、2Lの天然水のペットボトルの水を少し空け、ムーベンを追加して薄める形をとった。いざ、飲んでみる。

 

 

……不味い。否応なく不味い。子供だろうが大人だろうが誰が飲んだところでたぶん不味い。ポカリやアクエリほどは甘くないし、しょっぱさも感じる。看護師さんがちょっと引きつった笑顔で、頑張って飲んでくださいねと言っていたあの光景が脳裏を駆け巡る。さっきまで微笑ましいとすら感じていた名称でさえ憎たらしくなってくるマズさだ。1杯目を飲みきる頃、「あ〜美味しくなってきた気がする。うんうん。大丈夫かも。人間ってすご〜い。適応能力ってすごいわ〜。」と自分を勇気付けていた。心の持ちようは大事だ。しかし、2杯目を口に含み、飲み込む寸前でぶちまけてしまった。辛い。これからトータルで12杯も飲まなきゃいけないのに。泣きたい。この時点で、大腸検査をすることが今後極力ないよう健康に努めようと誓うわたし。涙目。

 

ムーベンを飲む目的は、便の状態を透き通った水に限りなく近くし、大腸の状態がわかりやすくするところにある。これを飲んでから短いときで3分に1度くらいのペースで便意が襲ってくる。そしてその度に綺麗になっていく便。とにかくわたしの今日タスクは、2時間に渡ってこの作業をひたすら繰り返すことだった。ムーベンと自分との闘いだ。「BEN」いま何回目?

 


椎名林檎 - きらきら武士

 

気付けば、電車の中でとてつもない腹痛が襲ってきたときなどによくやるTwitterでのエゴサーチをしていた。「ムーベン 辛い」「ムーベン 不味い」。みんなそうだよね、わたしだけじゃないよね…と普段集団意識もクソもない人間が誰かの共感を得るのに必死だった。

 

ただ、ここで一筋の光が見えてくる。確かに用意されたムーベンの量は2Lだが、あくまでもこれは最大量である。わたしの大腸は従順にハイペースで便を排出し続け、気付けば6杯目を目前に、目的の “ほぼ透明で固形物がほとんど浮かんでいない状態” まで来ていた。トイレに行く合間を縫って、慌てて看護師さんへ電話すると、「頑張ってもうちょっとだけ飲んで、でも本当に無理になったらまた電話してください」と言われた。

 

それから30分間粘り、涙目になりながらもムーベンを飲み続ける。途中から気付いたが、飲んだ後に口に残る後味がなんとも言えず美味しくないので、緩和するために一回毎に口をゆすぐのが効果的だった。鼻をつまみながら極力舌で味を感じないようにするという古典的方法ももちろん試した。そして、もう喉がムーベンを受け付けなくなった頃にもう一度電話して、看護師さんからようやくムーベンSTOPの許可が下りた。そこからは脱水症状にならないようにこまめに水分を取りつつ検査時間を待つ。

 

 

いよいよ検査

ここまで来てやっと本題である。結論から言えば検査はあまりにもすんなり終了した。点滴を打ちながら、氷の苦い粒を舐め、言われるがままに横になってマウスピースをはめていたら、いつの間にか気を失っていて夢を見ていた。高校時代の親しい友人と会う夢だった。看護師さん二人に抱えられてベッドまで辿り着き、しばらく横になっていたら目が覚めた。

 

良性の大腸ポリープを一つ切除したらしい。多少お腹に痛みを感じるのかと思っていたら、全くそんなこともなかった。胃・大腸ともに写真を見せてもらったが、素人目ながらにもツルッツルで健康的そのものだった。結果、わたしの胃腸はただ敏感というだけだった。前回から処方してもらっていた漢方を出してもらって病院を後にする。検査自体は10行にも満たない内容ですんなり終わってしまったことに拍子抜けした。

 

 

内視鏡検査、クライマックスへ

しかし、これで終わりではない。しばらく横になったあと、看護師さんから「大腸ポリープ切除後の食事について」の用紙を受け取っていた。3日は消化に良い食事をとってくださいとのことだった。悲しくて思わず、看護師さんに「ラーメンはダメですか?」「じゃあお寿司はダメですか?」と聞いたけれど、答えはいずれもNOだった。用紙に書かれていた食事内容は “熱を出した時に食べられるもの” そのものだった。実のない茶碗蒸しってなんだ。野菜スープの上澄みってなんだ。

 

 

色々言いたいことはあるが、餃子と卵をグツグツしたものをおじやのようにして食べたり、テンションは上がらないけれど消化は抜群にいい食べ物を食べ続けた。根は真面目なのだ。矛盾しているようだけれど、マックやラーメン、お寿司やピザなどのジャンキーな食べ物を食べるために健康を維持しているような気がしてきた。食べ過ぎでは完全に食べられなくなってしまうので、程よいペースを保ち、野菜などの栄養を取りつつも隙を見つけてはジャンクフードを食べる。この時期はとにかくマックのグレープソーダフロートがマジで最高。

 

 

そして検査から3日目の夕方、ようやく念願の “ちゃんとしたご飯” を食べに行く。

みんな大好きサイゼリヤ。これでやっと長かった一連の内視鏡検査が終わる。

 

店員さんが注文を取りに来てくれて、夫と顔を見合わせた。とてつもない臭いが辺りに立ち込めている。店員さんが強烈なワ⚪︎ガだったのだ。体質的な問題はなかなか解決するのは難しいし、その中にもほんのり甘い香りも漂っていたので何かしらの対策をしているのかもしれない。ただ、今日だけはどうかやめて欲しかった。その人がすごくイヤな人間だったら良いのになと思った。良い人そうだったのが余計に何だか辛い。

 

 

しまいきれない悲しい気持ちを胸に抱えながら、アーリオオーリオに青豆のサラダを混ぜたパスタを食べた。美味しかった。ニンニクの香りがいつもよりも余計に良い香りに感じた。

 

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気分転換のために間違い探しをしたけれど、最後まで残りのひとつだけが見つけられなかった。わたしの初めての内視鏡検査は、いろんな意味でほろ苦い思い出となった。


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写真:著者撮影(iPhone6を使用)