緊急事態宣言の前夜

夕飯には仕込んでおいたにんにくと生姜たっぷりの唐揚げに大根おろしと天翔の柚子ポン酢を合わせて食べた。身体が薬味を欲している。

 

明日にも、緊急事態宣言が出るらしい。 

本当は昨夜のうちに買い出しをしておきたかったのだけれど、近隣の小さなスーパーにしか行くことができなかったので、車を20分ほど走らせて深夜まで空いている大型のスーパーへ行く。

目の前に広がる光景に驚く。スーパー内はすでにプチパニックの起きた後だった。棚はスカスカだ。特に、パスタや乾麺はほぼ空、それに関西人の命であろうお好み焼き粉は見事にすっからかんだった。中力粉は下の棚になぜかたくさん積まれたままだったのでカゴに入れた。

 

 

予想以上の景色にショックを受けてしまい、こういうとき何を買ったら良いのかわからなくなって、英語表記でバターがたっぷり入っていそうなチョコチップクッキーやチョコクリームに無駄に手を伸ばす。さすがにチョコクリームは不要不急の買い物なので控えたが、チョコチップクッキーはカゴに入ったままだ。

 

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冷凍食品コーナーでは初老の夫婦がせっせと冷凍のお好み焼きをカゴへと運んでいた。関西人のお手本ともいうべきだ。冷凍庫がお好み焼きでいっぱいになってしまうが、他の冷凍食品はいいのだろうか…と勝手に気になってしまった。趣味嗜好も冷凍庫の中身も人それぞれで良いんだよね。

 

 

 

レジの店員さんはかなり混乱しているようだった。次から次へとやってくる客と商品のたくさん詰まったカゴに余裕はないはずなのに、わたしの前に並んでいたおじさんとは笑顔で談笑していた。ウェーブヘアーのポニーテールにパキッとした赤リップがやけに似合っていて印象的だった。有り難いのと同時に、なんだか申し訳ない気分にすらなる。

 

 

結局、切り干し大根や鯖缶、ハムなどを購入した。粉の洗濯洗剤も買っておいた。カートを押して車に戻りながら、胸のあたりが少しザワザワしてきてしまった。周りにいる人間が全員ひとつのテーマに左右されて行動することの不気味さ、見えないものに襲われる恐怖を実感してしまい苦しくなってきた。

 

 

近くの薬局にも足を運んでみると、店内は全く品薄の様子はなく、外に陳列されていたトイレットペーパーやティッシュなどの紙類が減っているだけだった。パスタや乾麺も十分に在庫があった。さっきの大型スーパーでは購買意欲を焦らされるような感覚があったが、異常な雰囲気だったんだな…ということがわかり少し落ち着いた。

 

 

明日からどうなるのだろうか。遠い先のことを考えるのではなくて、ほんのすぐ先の未来を考えて生きていたら良いのかな、なんてことをぼーっと自宅までの間に考えていた。言葉になりきれていないもやっとした溜め息ばかりが出てくる。なんだかなあ。

 

 

単純に気持ち的な疲労で身体を壊してしまいそうなので、43℃の熱めの湯船に浸かった。ああ、また早く広い露天風呂に入りたい。そのときは、出来ればお茶風呂か、りんごやみかんのたくさん浮いたお風呂に入りたい。

 

 

明日もほどほどに生きよう。一日一日が目まぐるしくて付いて行けていないけれど、ひとつひとつ状況を飲み込んでいこうと思う。

 

写真:Alexas_FotosによるPixabayからの画像