シルコ旅行記 〜直島 嵐の中の南瓜編〜

間が空いてしまいましたが、シルコ旅行記の続きをお届けします。

2日目は直島 嵐の中の南瓜編です。

 

1日目の記事はこちらからどうぞ。 

misoshiruko.hatenablog.com

早く起きた旅の朝は

2日目の朝、TEN to SEN cocohttps://tentosen.jp)をチェックアウトし、高松港へと向かう。名残惜しいけれど、今回は瀬戸内がメインなので、高松ともこれにておさらばです。

 

まずは腹ごしらえ。前日のチェックイン時に TEN to SENのスタッフさんに教えて頂いた、早朝でも食べられるというおすすめのうどん屋さん、味庄へ。

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お店の外観、内観のすべてから、いい味が出ています。こちらの味庄さん、早朝5時からやっているというから驚き。始発より早いかもしれません。また、高松商店街の中心部あたりのうどん屋さんは開店時間がやや遅め(9時とか10時とか)なので、高松駅まで出てからの方が朝早くにうどんにありつける可能性は高め。

 

さあ何を食べようか、朝から天ぷらいっちゃおうかな、と一瞬迷いながらも、さすがに血糖値ブチ上げすぎなのでは……と自制し、ワカメうどん(温)をチョイスしました(280円)。

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事前に調べたお店のイチオシを目当てに行く、というのも一種の楽しみ方だと思うけれど、下調べなくお店に入って自分の食べたい!という欲望に沿うのもまた面白いな、と個人的には思います。わかめうどん、うどんのコシとわかめのシャキシャキ感が相まって美味しかったなあ。朝からこんなに贅沢なことはない。こんなに美味しいうどんが朝から200円そこそこで食べられるなんて香川県民が羨ましい……。味庄さん、また近いうちに訪れたいお店の一つとなりました。しばらくこの後、たまご天に後ろ髪を引かれていたことは内緒。朝なんだもん、血糖値ぶち上げてなんぼだったよなあ。

 

 

モーニングも済んだところで、高松港へ。

高松駅を左手に見ると、右奥の方に「高松港はこっち!」的な案内がデカデカと書かれたエスカレーターがあるので初心者でも分かりやすい。Sと私の地元はアピール下手(勿論案内も下手)なので、香川の案内本当分かり易いわーアピールも上手だし少しは見習って欲しいわーと思うのでありました。

 

それはさておき、案内通りに歩いていくと港が見えて来た〜!

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この日の朝はTHE・秋晴れ。旅に最適で最高な天気。左側の高松港にはちょうど小豆島行きのフェリーが停まっており、右側の高松東港にも小学生くらいの子供たちがわんさか乗っている旅客船が出発を待っています。

 

高松駅周辺はオフィスビルやホテルなど結構大きい建物が並んでいたので、すぐ向こう側にこうして海が広がっているのがとても不思議でした。海と言っても瀬戸内海、穏やかでまるで広い湖のよう。瀬戸内海の近くで育った方は穏やかな人が多いのだろうか……なんてことを想像したり。四国といえば、チャットモンチーは徳島出身だったな、あの心地よいリズムはこの穏やかな海のそばだからこそ生まれたのかな、なんてことを考えたり。

 

高松港から直島 宮浦港へ 

そして、今回の旅で最も心配していたのがフェリー

何故なら、高松港からだけでも直島、豊島、小豆島、女木島、男木島、大島行き、三宮行きなど複数の路線があり、島によっては2つや3つも港があるのです。路線によってフェリー会社もそれぞれ違うため、時刻表を探し出すだけで超一苦労。ガイドブックにはほとんど時刻表は載っていないため、基本はフェリー会社のHPで確認する必要があり、これがまた複雑でわかりずらい。瀬戸内国際芸術祭の期間内外で変わるだけでなく、土日ダイヤや平日のフェリー定休日など結構イレギュラーが多いので注意が必要です。いくらペーパーレス社会とはいえ、こういう時手元に時刻表があると心強い(自宅のプリンターで印刷しまくった)。 

 

今回の行き先は直島

宮浦港行きのフェリーに乗るため、四国汽船のカウンターへと向かいます。

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高松ー直島(宮浦)便は以下の2種類。

  • フェリー(約50分)/520円
  • 高速旅客船(約30分)/1,220円

だいたい30分〜1時間おきにフェリーと高速旅客船が交互に来るので、高速船よりも半額以下で乗れるフェリーでのんびり行くことにしました。

  

出航の15分前くらいに船が来るので、ぞろぞろと乗船。こちらが船内の様子です。

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想像以上に綺麗で広くてびっくり。大きなテレビも付いているし、ボックス席?というのか、向かい合った席なんかもあり非常に快適です。ただこの日はあまりにも天気が良かったので、デッキに上がり、海風に当たります。この日は瀬戸内国際芸術祭の期間中ではありませんでしたが、思っていたよりも人が多い。

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甲板の両サイドに特等席のベンチが8つくらいあるんですが、欧米人のカップルが脇目も振らずにイチャイチャしていて、それはもうバカンスっぽかった(語彙力)。

 

フェリーはおよそ1時間かかるとはいえ、天気がよければこの景色。時間に余裕があれば、料金も安いしゆったりできるのでフェリーがおすすめです。穏やかな海を見ていたら、普段抱えていた悩みがどうでも良く思えてきます。突然哀愁の漂うシルコ。海を見たら誰だって少しは黄昏たくなるものでしょ。

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めまぐるしく変わる景色を楽しんでいたら、あっという間に直島 宮浦港へ到着。乗船時は写真を撮っている余裕がなかったんですが、直島行きのフェリーは草間彌生さんを連想させるような赤いドット柄でとても可愛い外装をしていました。

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港の端にはあの有名な『赤かぼちゃ』が海に面するように佇んでおり、フェリーを降りた人が思い思いに写真を撮っています。穴から顔を覗かせる人、セルフタイマーでかぼちゃの前にあぐらをかいてセルフィするチャイニーズ。後方からそんな諸々の光景を撮るシルコ。なんだかサカナクションの「誰かを笑う人の後ろでもそれを笑う人〜」っていう歌詞みたいだな。


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この直後、とっても可愛らしい大学生くらいの女の子に「写真を撮ってもらえませんか?」と声をかけられました。可愛い子に声をかけられて内心テンションがあがるシルコ。だいたい旅行中には一日に1組以上の方には声をかけられます。ひとり旅なのかな?と思って聞いてみると、一緒に来るはずのお友達が高熱を出してしまったとのこと。ぐすん。でも、ひとり旅もいいよね。この後も颯爽と自転車で駆け抜けていく後姿を見かけたり、途中の美術館ですれ違って少しお話ししたり、ちょっとした交流ができて楽しかった。彼女のひとり旅が素敵な思い出になったことを願います。

 

ひとしきり赤かぼちゃに満足したところで、早めの昼食を食べに。あれ?さっきうどん食べたばっかりじゃ……?と今これを書いていて自分でも思っています。分かっています。でも、いいんです!(川平慈英で脳内再生を)

何故なら食べることこそが旅の醍醐味だから。

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宮浦港から徒歩5分くらいにある 島食DOみやんだ にて海鮮丼を食す

左手に見えるお味噌汁、中にカメノテと呼ばれる、その名の通り亀の手のような貝が入っているんですが、これがまたショッキングな見た目で思わず言葉を失います。各テーブルには、丁寧にラミレートされた手作りの カメノテ食べ方ガイド” が置いてあり、それを見ながら見よう見まねで食べてみます。手の部分をスポッと抜いて中身を食べるんですけど、食べられるところがまあ少ない……。初めて食べた感想としては「これを最初に食べた人の勇気、讃えたい。」が正直なところ。わたし的に、これ初めて食べた人頭おかしいんじゃないかランキングの第1位はエビなんですが、それに匹敵するくらい考えてしまう、何故これを食べるに至ったのか。カメノテ、かなりセンシティブな内容のため、画像は載せませんが、気になる方は是非検索してみてくださいね!どうか自己責任でお願いします!(自己責任って本当便利な言葉ダナー。)

 

 

そんなこんなでカメノテと格闘してる間に、だんだん雲行きが怪しくなり、お店を出る頃には外は雨模様。朝の秋晴れは一体なんだったんだろうか……と思うくらいの土砂降り。傘を差して運転するわけにもいかないので、おそらく島唯一?のコンビニであろうセブンにてレインコートを購入し、あらかじめ予約していたレンタサイクルをピックアップします。 旅行のお供は高校時代、汗だくで練習に励んだ部活仲間なので、ビジュアルを気にすることなく非常に気が楽でした(元陸上部)。直島は坂が多いということで電動自転車を選んでいましたが、これが大・正・解!電動とはいえ、急な坂道はある程度自力で漕ぐ必要がありますが、自慢の脚力で坂を登っていきます。

 

最初の目的地は地中美術館

名前の通り地下にあり、上空からは地中に埋まっているかのように見える不思議な美術館。設計は安藤忠雄氏。

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地中美術館hp(http://benesse-artsite.jp/art/chichu.html)より

昨年2018年の8月からオンライン予約制になっていますが、当日入場数に余裕があれば、チケットセンターで当日券を購入することができます。運良く、余裕があるということでその場で当日券を購入。なお、地中美術館はゲートでチケットを渡してから敷地内での撮影は禁止。記録に残すのではなく記憶に残す、いま多くの人が忘れてしまいがちなことな気がします。たまにはカメラや携帯をしまって、目の前の世界と向き合うことも必要ですよね(しみじみ)。

 

チケットは2,060円と美術館の中ではややお高めですが、入館してすぐ「この値段で逆にいいのか??!?」と思ってしまうほどの満足度。クロード・モネの作品が5点も貯蔵されており、空間がモネの作品を展示するために建築されたことが素人ながらに良く分かる……。曇天の少し暗い自然光の下で観るモネの絵は一言では表せない独特な雰囲気があります。晴天では生み出せないであろうあの空間、雨が降ってくれて良かったとさえ思うほどに完成された空間でした。フェリーに乗ったときも直島に着いてからも、ヨーロッパ系の外国観光客が多いな〜と思ったのですが、この地中美術館をお目当てにしている方が多いのかな、という気がしました。

 

わたしはタレルの部屋が大好きで、金沢に行くたびに21世紀美術館に寄っては20分くらい空を見上げながらでぼーっと座っているのですが、この地中美術館にもタレルの部屋があり、事前に何も調べていなかったこともあってなおさら歓喜!この二つだけでもうお腹いっぱいです。最後のウォルター・デ・マリアの真っ黒の球体に至っては、友人がツヤツヤの泥団子と言い出したことをきっかけに、我々の教養のなさが爆発してしまったので割愛。

 

帰り道、地中美術館からチケットセンターへ下る小道のそばにあるモネの絵画のような蓮の池だけは写真に収めることが出来ました。

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地中美術館からさらに15分ほど自転車を走らせ、宮浦港とは島の真反対にある木村港付近を散策。

30代くらいの素敵なご夫婦がやられているおかしとコーヒーにてチャイを頂きます。雨ざらしで冷え切った体が温まってホッとする。他にもオートミールクッキーやスコーンなども販売していました。ディスプレイも外装もとっても素敵だったなあ。

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レンタサイクルの返却時間も迫る中、どうしても自分の目で見たかった草間彌生さんの『南瓜』を観るべく、嵐の中をずぶ濡れになりながら海沿いの坂道を下っていきます。そういえば、高校生の時、雨の日はわざと傘をささないでずぶ濡れになりながら帰ったっけ。今じゃ流石にできないけれど、なんか気分がスカッとしたんだよなあ。

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ようやく観れた念願の黄色いかぼちゃ。近くで見ると集合体恐怖症の方にはだいぶきついであろうドットの羅列がすごい。遠くが霞んで見えるほどこの時もかなり雨が強く降っていたのですが、南瓜の脇で韓国人の女の子が傘もささずにワンピースでぴょんぴょん跳ねている様子を、彼氏であろうカメラマンがバシバシ撮っていたのがすごく良かった。まさかこんなにも土砂降りになると思っていなかったので、わたしの足元はドロドロのビーサンでしたが、ここまできたらもうなんでも良い。雨予報だった最終日のためにスーツケースにはレインブーツを仕込んでいたというのにお天道様ってやつは本当に気まぐれだなあ。最後の力を振り、高校生に戻ったかのように爆走して宮浦港へ帰還しました。

 

なお、本日のお宿は宮浦港近くにある星屑https://ougiya-naoshima.jp/inn/hoshikuzu.html)。古民家を改修したゲストハウスなんですが、私たちが泊まったのは2階の隠し部屋?みたいなワクワクするお部屋でした。

 

小アジの南蛮漬けとジャーマン・ガール

チェックインを終えて一息ついてから、宿からほど近くにある居酒屋 ちくりんへ。

私たちが瓶ビールを1本空ける頃、ドイツ人の女の子たちが入店してきました。隣の席に並んで座ったのをきっかけに、店主のおっちゃんも交えてみんなでお喋りをしたのがこの日一番の思い出。もちろんペラペラとまではいかないですが、こういう時英語が喋れて良かったなあと思います。

 

学芸員で、現地の同じグループの美術館で働いているというふたりのジャーマン・ガール。京都で開催される学会に参加するため、今回初めての来日だそう。ドイツでも頻繁に日本食を食べているらしく、二人の箸の使い方が上手だった。店主のおっちゃんが「これは食べたことあるか?」と言って、嬉しそうに次から次へと色んな料理をサービスで出してくれたのだけど、その日の朝に自分で釣ってきたという小アジの南蛮漬けが今まで食べたどんな南蛮漬けよりも美味しくて忘れられない。

 

夜は近くの『I♡湯』に寄る予定でお風呂セットを持ってきていたため、本当はサクッと飲んで帰ろうと思っていたのですが、嬉しい誤算とはまさにこのこと。昼間にI♡湯の入り口で撮った写真が可愛かったのでこれだけ載せさせてください!金魚とペンギン。

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4時間くらい気付いたら飲んでいたんだけど、日本に来てどんなところに行ったのか、ドイツではいま何が流行っているのか、という話から結構真面目な話まで色んなことが話せてすごく有意義な時間だった。酔っ払っていたのでうろ覚えだけど……。これで日本語を勉強してるよ!と見せてくれた本の表紙があまりにもステレオタイプすぎて笑ってしまった。

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ドイツのイメージってウインナーにビール?みたいなものしか正直なかったけれど、二人と話していて気付いたのは、ドイツと日本の国民性は結構似ているのかな、ということ。特に、真面目というか勤勉なところ。厳密には、日本人の勤勉さとドイツ人のそれはまるっきり違うと思うんだけれど。ドイツ人は効率をあげるシステムを作るのが上手らしい。わたしは日本人を代表して「日本人は働くために生きるような社会になってるけど、それが馬鹿げてるって気付いてる人もいるんだよ!」ということを強く主張しておきました。知っている日本語が少ないなかで、二人が揃って知っていた単語が過労死だったのが、一国民として恥ずかしいし虚しいなと思った。

 

ちなみに、わたしは大学時代、ドイツ語が第二外国語だったんですが、ドイツ語に関してはかなり怠惰な学生だったので、「いまでも覚えてる単語?VOLKSとWAGENだけだよ!」と言ったらめちゃくちゃ笑ってくれたので優しかった。とにかく、本人達にも精一杯伝えたけれど、日本に来てくれて本当にありがとうという気持ちでいっぱいでした。また近い未来にベルリンで会おうね、と約束をして別れました。お願いだからわたしが行くまで解体しないでおくれ、EUよ。

 

ちなみに今、ドイツではアラビアンフードとひよこ豆が流行っているらしい。 ひよこ豆、わたしは大好きなんだけど、多分日本では一生流行らないだろうな。

 

3日目、オリーブと醤油の島 小豆島編に続く。

 

写真:著者撮影(Olympus E-M10 Mark IIIを使用)