鯖缶、姉、ポラロイドカメラ

先週末から39℃の高熱でダウンして、一週間の半分を布団の上で過ごしてしまった。病院に行ったら今流行りの手足口病だと診断された。どうやら先日のプールで貰ってきてしまったらしい。お医者さんには喉に斑点ができていると言われた。診断を聞いていたかのように、翌日から手や足に赤い斑点が増えていった。Twitterでみていたやつだ。懸垂をした後に水ぶくれがたくさんできて痛くなるような感覚が数日続いた。

 

寝込んでから2日目か3日目に夫がせっせとキッチンに立って何かを作っていた。この前の飲み会で美味しかったとやたら感動していた鯖の炊き込みご飯を作ってくれたらしい。ただ、私は喉が腫れてポカリスエットを飲み込むだけで精一杯だったので、炊き込みご飯など食べられるはずがなく、一口だけ食べてご馳走さまをした。手足口病には特効薬がなく、喉の痛みや解熱剤などの薬は貰ったものの、なかなか喉の痛みが治まらない。湿疹ができては薬で抑え、気がつけばまた痛みは元に戻り、いたちごっこだった。

 

生理が途中から被ったのもあって、発症から5日ほど経ってやっと動けるようになった。夫に任せきりだったキッチンは荒れ果てている。心なしか生ゴミの香りが強い気がした。確かに夏はゴミが傷みやすい時期だが、こんなにもコバエが出るものだろうか?と疑問に思っていた。床に落ちていた小さな袋の中をみたら、鯖の炊き込みご飯に使ったであろう鯖の水煮缶がそのまま入れられていた。水でゆすいだ後もない、そのままの状態で。見つけて即、発狂した。虎になりそうだ。どうしたら鯖缶を洗わずに床に放置することになるのだ。しかもこのクソ暑い夏に。溜まったタスクを片付けたら、私が倒れた時用のマニュアルを作ろうと心に決めた。そうでもしないと家がゴミ箱になる。

 

アホな姉ちゃん

姉からめんどくさいLINEがきた。ざっくりいうと「3週間後くらいにそっちに行くから遊ばない?むしろキャンプしない?」という内容だった。もう6年くらい付き合っている彼氏と同棲している姉、最近知り合いから車を譲って貰って二人でよくドライブに行っているらしい。私たち夫婦と違い、姉たち二人は良くも悪くものほほんとしている。こちらの都合などおかまいなしで振り回されるのはいつものことだ。

 

私たち夫婦の間で、私の姉のことを“アホな姉ちゃん”と呼んでいることは、本人には口が裂けても言えない。家族とはどうしてこんなにも勝手なのか、といつも思う。姉だって、父親に振り回されて家族の自分勝手さには嫌という程飽きているはずなのに、妹のことを振り回している。時代は繰り返されるのだ。

 

私の家族はみんな変わっている。父親と母親が変わっていれば、そりゃ娘たちもちょっと変な子になったってそれは仕方のないことだよな。この記事に私の家族のクレイジーさが詰まっている。気になる方はどうぞ。人それぞれいろんな闇があるよね。

 

misoshiruko.hatenablog.com

 

ポラロイドカメラ

今朝、昔好きだった人の夢を見て起きた。

 

二つ年上の先輩で、私が二十歳の頃に出会った。透き通った目をしていて、人をあまり寄せ付けないけれど、誰がどう見ても格好いいと思うような不思議な魅力のある人だった。その先輩ともう一人の先輩が人を募って、集められた15人くらいの都内の大学生と一緒に2週間くらいカンボジアを旅した。帰国してから、そのメンバーを交えて遊んだり、二人でも出かけたりした。ある日の夜は、完璧のように見えるその人の、過去の傷のような出来事を話してくれ、特別な人間になったような気分だった。

 

二人とも写真を撮るのが好きで、ある時は中目黒の小さなギャラリーに写真展をみに行った。渋谷へ向かう歩道橋の上で、「二人でひとつポラロイドカメラを買って一緒に写真を撮りに行こうよ」と言われた。私は苦学生だったので、ノリでポラロイドカメラを買うなんてできなかった。俺が〇万円出すから…と言ってくれたけれど、笑ってはぐらかしてしまった。

 

いま思えば、あの時カメラを買っていたら、二人でいろんなところに写真を撮りに行けたんだよな。その後も何度かお誘いしてくれたけれど、予定の前日に結膜炎になってしまい、コンタクトが付けられないのが嫌でドタキャンしてしまったり、何かと予定が被ったりして、3度お断りしてしまったらその後もうお誘いされることはなくなった。大学を卒業してから、集まる機会も少なくなり、私も集まりに参加しなくなり、会う機会はぱったりなくなってしまった。会社を起こして忙しいというのを人づてに聞いた。

 

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ある日、幼稚園から付き合いのある友人と一緒に青山のファーマーズマーケットへ行った。人混みの中で、突然誰かと目が合った。吸い寄せられるようにその方向を見てみたら、その人が居た。ちゃんと話したのは3年ぶりとかだったと思う。わたしは半年後に結婚する予定で、関西に引っ越すほんの数ヶ月前だった。ずっとその人のことが気がかりで、でももうこの先しばらく会うこともないだろうと思って居た矢先の出来事だったので本当にびっくりした。少し切なかったけどホッとしたのは、先輩に久しぶりに会っても、ときめいた気持ちがもう生まれなかったことだった。

 

去年その先輩も結婚したらしい。ポラロイドカメラを買おうと言われたあの日の出来事をいま思いだすと、なんてロマンチックなんだろうと思う。願わなかったからこそ永遠に綺麗な思い出のままで、わたしはきっとまたその美しい記憶の続きを夢に見て起きるのだろう。

 

写真:著者撮影(iPhone6を使用)