雲はグレー いちごは赤

新しい街に引っ越してから二ヶ月が経った。

なんとなくこの街の雰囲気にも慣れてきて、ここがどういう土地なのか、なんとなく掴めてきた。どんよりとした曇り空が似合うちょっと汚いこの街は、上京してから初めて住んだ街にどことなく似ている。とはいえ、駅前の商店街には結構いい感じのパン屋さんやケーキ屋さん、お花屋さんなどがあって、そのあたりは比較的雰囲気も明るくて気に入っている。なかなかまだ飲み歩く気分にはなれないが、立ち飲み屋さんなど、何軒かしっかりと目星をつけている。

f:id:uminekoblues:20200610211512j:plain

  ちょっとした祝い事があり街のケーキ屋でショートケーキを買った

この間、大きな川を挟んで向こう側の街に寄ってみた。車ではすんなり行けるのに、路線が入り組んでいて複雑で、電車で行くには倍以上の時間がかかった。乗り換えのために、それまで全く読み方も知らなかった名前の駅に降り立つ。あまりにも何もない駅だったばっかりに、なんでわたしこんな駅に降り立ったんだろうと思わず少し笑ってしまった。

 

どの街に住んだとしても、地元を除いて自分のことを知っている人などほとんどいない。そんなの当たり前なはずなのに、ここの人は「みんなわたしのことを知らないんだ」と思うのと同時に、「わたしもここに住んでいる人のことを何も知らないんだ」と思うと心細くなった。てっきり旅にでもきているような錯覚に陥るけれど、わたしは家に帰ろうとしているんだ。この近くに自分の家があるのだと思うとなおさら不思議な気持ちだった。旅に行くときは、「誰も自分のことを知らない」という状況を好んでどこかに行くのに、住む場所となると急に心細くなるだなんて、虫の良すぎる話だなあと思う。

 

ほんのり寂しい気分を覚えながらも、雰囲気の良い焼肉屋を見つけて思わず写真をとった。なかから常連さんと思しき賑やかな笑い声が聞こえて、少しだけ、心細い気持ちがほぐれた。帰り道はちょうどマジックアワーの時間帯で、駅から見える夕日がやけに綺麗で見入ってしまった。

 

いままで6つの街に住んだ。そのうちの1回は、居候みたいな棲みつき方だったけれど。5回の引っ越しに全て共通していることは希望に満ち溢れているということだ。いつも前向きな気持ちで、新しい街での生活を始められていることはとても幸運なことだと思う。もしかすると、わたしはその街の良さや楽しみを見つけることがとびきり上手なのかもしれない。きっとこの街も、わたしの背中を優しく後押ししてくれることだろう。いま、結構気持ちが落ち込んでいて、ブログは下書きが溜まってばかりだけれど、自分のペースでぼちぼち進んでいこうと思う。